「子供の歯が、なんだか白っぽくなっている」
「乳歯の虫歯は、どうせ生え変わるから平気だよね?」
「痛がっていないみたいだけど、歯医者さんに行った方がいいのかな?」
このような疑問や不安を感じていませんか?
乳歯の虫歯は永久歯の虫歯とは違い、「進行が早く」「痛みを感じにくい」という厄介な特徴を持っています。「そのうち抜けるから」と放置すると、後から生えてくる永久歯の歯並びや歯質にまで悪影響を及ぼすことがあります。
このコラムでは、乳歯の虫歯の特徴、進行度別の症状・治療法などについて解説します。
目次
まずは知っておきたい!乳歯の虫歯3つの特徴
乳歯の虫歯は永久歯の虫歯では異なる特徴があります。
進行が早い
乳歯の虫歯は、大人の歯よりも速いスピードで進行するという特徴があります。
なぜなら、乳歯は永久歯と比べて表面を覆う「エナメル質」が薄く、組織全体も柔らかいためです。虫歯菌が生み出す酸への抵抗力が低く、あっという間に歯の内部深くまで侵食されてしまいます。保護者の方が気づいた時には、歯の内部で虫歯が大きく広がっていることも多いです。
黒ではなく「白っぽい」ことがある
乳歯の初期の虫歯は白く濁って見えることがあります。
これは、虫歯菌の酸によって歯の表面からカルシウムなどのミネラル成分が溶け出し、「脱灰(だっかい)」と呼ばれる状態になるためです。
「虫歯=黒い穴」という先入観があると、初期サインを見逃してしまう可能性があります。歯の色の変化にも注意を払いましょう。
痛みを感じにくく、発見が遅れがち
乳歯の虫歯は、進行するまで痛みを感じにくいという厄介な特徴を持っています。
乳歯の神経は、永久歯に比べて感覚がやや鈍感な構造になっています。そのため、虫歯が内部で広がっていても、お子さん自身が痛みをはっきりと自覚しにくいのです。
お子さんが「歯が痛い」と初めて口にした時には、すでに虫歯が神経の近くまで達してしまっているケースも珍しくありません。
乳歯が虫歯になりやすい理由

そもそも、なぜ子どもの乳歯はこんなにも虫歯になりやすいのでしょうか。ここでは、その理由を3つ紹介します。
エナメル質が薄く酸に弱い
乳歯が虫歯になりやすい理由は、歯の表面を覆うエナメル質が薄く、酸の攻撃に弱いからです。
乳歯のエナメル質の厚さは、永久歯の約半分しかありません。エナメル質は歯を酸から守るバリアの役割がありますが、そのバリアが薄いため、食事やおやつによって口の中が酸性になると歯の表面が溶け始め、虫歯のリスクが一気に高まります。
歯の質がやわらかい
乳歯は、エナメル質の内部にある「象牙質」も全体的に柔らかい構造をしています。そのため、歯の表面にはごく小さな穴しか見えなくても、レントゲンを撮ってみると中で大きく広がっているケースもあります。
上手な歯磨きがまだ難しい
小さなお子さんは、まだ手先を思い通りに動かすことができず、歯ブラシを歯の隅々まで的確に当てるのが困難です。
また、歯磨き自体を嫌がったり、すぐに飽きてしまったりすることも多く、どうしても磨き残しが発生してしまいます。効果的な歯磨きができないことも、乳歯が虫歯になりやすい大きな要因です。
これって虫歯?進行度別の症状と治療法

虫歯は進行度によってC0〜C4の5段階に分けられ、症状や治療法が大きく異なります。早期であるほど、お子さんへの負担が少ない治療で済みます。
C0(初期虫歯)
C0は、歯に穴が開く一歩手前の「初期虫歯」の段階で、適切なケアをすれば歯を削らずに治せる可能性があります。
この段階は、歯の表面からミネラルが溶け出している「脱灰」の状態です。そのため、フッ素の活用や正しい歯磨きによって歯にミネラルを補給し、「再石灰化」を促すことで、歯を元の健康な状態に戻すことが期待できます。
C1(エナメル質の虫歯)
C1は、虫歯がエナメル質内にとどまっている状態です。
C0とは違い、歯の表面に小さな穴ができてしまっているため、残念ながら自然治癒は期待できません。虫歯が内部にこれ以上広がらないように、感染した部分だけを丁寧に取り除く必要があります。治療では、虫歯の部分だけを削り取り、その日のうちに歯の色に近い白いプラスチック(レジン)を詰めて修復します。
痛みを感じることはほとんどなく、麻酔も不要な場合が多いため、通常は1回の通院で治療が完了します。
C2(象牙質の虫歯)
C2は、虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで達した状態です。
象牙質には神経につながる無数の細い管が通っています。虫歯がここまで達すると、その管を通して刺激が神経に伝わり、「冷たいものがしみる」「甘いものを食べると痛い」といった自覚症状が出始めます。
治療で歯を削る際にも痛みを感じやすいため、多くの場合、麻酔の注射が必要になります。お子さんによっては、麻酔の注射を怖がったり、治療中にじっと座っているのが難しかったりすることも。C2まで進行すると、お子さんにとって「歯医者さんは怖い」というイメージがつきやすくなります。この段階になる前に治療を開始するのが理想です。
C3(神経まで達した虫歯)
C3は、虫歯が歯の神経(歯髄)にまで達してしまった状態です。
歯の神経が虫歯菌に感染し、内部で強い炎症を起こすため、何もしなくてもズキズキと脈打つように激しく痛むようになります。この痛みを取り除くには、感染した神経をきれいに取り除く「根管治療(こんかんちりょう)」という処置が必要です。
治療は複数回に及びます。まず神経を取り除いて根の中を消毒し、薬を詰めます。その後、もろくなった歯を補強するために金属の冠(いわゆる銀歯)などを被せることが多くなります。通院回数も増え、お子さんにとっても保護者の方にとっても大きな負担となります。
C4(歯の根だけの状態)
C4は、歯の頭の部分がほとんど溶けてなくなり、根だけが残った状態です。
この段階になると歯の神経は死んでしまうため、C3のような激しい痛みはなくなります。しかし、歯の根の先で細菌が繁殖し、膿の袋を作ることがあります。この膿が、顎の骨を溶かしたり、すぐ下で出番を待っている永久歯にダメージを与えたりする可能性が高いです。
C4の乳歯を放置した結果、後から生えてくる永久歯が茶色く変色したり、形がいびつになったり、正しい位置に生えてこれずに歯並びがガタガタになる原因になったりします。
治療法としても、多くの場合、乳歯を抜く(抜歯)しか選択肢がありません。
家庭でできる虫歯予防
虫歯になってしまったら歯科医院での治療が必要ですが、大切なのは虫歯にならないようにすることです。
毎日の正しいケアと食生活の工夫を習慣化することが、子供を虫歯から守る効果的な方法です。
- 小学校中学年頃まで、保護者が毎日仕上げ磨きを行う
- 1日1回はデンタルフロスを使い、歯と歯の間の汚れを取り除く
- 年齢に合ったフッ素入り歯磨き粉を適量使い、うがいは軽く1~2回にする
- おやつの時間を決め、「だらだら食べ」を防ぐ
- 普段の水分補給は水やお茶にし、糖分の多い飲み物は控える
これらの方法は、一つひとつは小さなことに見えるかもしれません。しかし、この毎日の地道な積み重ねこそが効果的な予防策となります。仕上げ磨きやフロスといった直接的なケアと、食生活を整えるという環境づくり、この両方を意識して、ぜひ今日から実践してみてください。
まとめ|小さなことでも毎日の予防が乳歯の虫歯を防ぎます

本記事では、乳歯の虫歯の特徴から進行度別の治療法、予防法まで解説しました。
乳歯は永久歯に比べてエナメル質が薄く柔らかいため、虫歯の進行が早いという特徴があります。また、痛みを感じにくく、初期段階では黒ではなく白く見えることもあるため、保護者の方が気づいた時にはすでに重症化しているケースも少なくありません。
虫歯が進行すると、治療の際にお子さんへの負担が大きくなるだけでなく、将来生えてくる永久歯の健康にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
仕上げ磨きやデンタルフロスの使用、食生活の見直しといった家庭での予防を徹底しましょう。そして、少しでも気になる変化を見つけたら、歯科医師に相談してください。
定期検診も忘れずに受診して、お子さんの大切な歯を守っていきましょう。